相続人が亡くなっていた場合の相続はどうなるのか? 代襲相続と数次相続について
先日、書士会の研修を受講してきました。内容は遺産分割協議書の作成に関するもので、非常に有意義なものでした。
しかしペーペーな自分はすぐに業務に活かすという機会もまだあまりないので、とりあえず学んだ内容の一部について自分なりに整理してブログにアウトプットしてみます。
今回は代襲相続と数次相続についてまとめてみます。代襲相続と数次相続の違いについて結論から言えば、被相続人と相続人のどちらが先に亡くなっているかです。被相続人よりも相続人の方が先になくなっていれば代襲相続が発生する可能性があり、被相続人が亡くなった後に相続手続きをしないまま相続人も亡くなってしまったら数次相続が発生する可能性があります。
以下、それぞれについてまとめます。
代襲相続について
これについて、民法887条に規定されています。
(子及びその代襲者等の相続権)
e-Gov 法令検索 民法
第八百八十七条
被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
ここで少し用語の説明をしておきます。被相続人とは亡くなった人で、これから分割しようとする遺産を生前に所有していた人になります。そして相続人とは、その遺産を受け取る人になります。相続人が複数になる場合は勝手に分割することはできず、相続人全員で協議しなければなりません。
ということで上記をまとめると、代襲相続とは相続人となるべき人がすでに亡くなっていた場合に、相続人の地位がその子に移ることを言います。
ここで重要なのが相続人となるべき人が亡くなったタイミングです。代襲相続となるためには、被相続人が亡くなるよりも先に相続人が亡くなっていることが必要となります。
この順序が逆になり、被相続人が亡くなった後に、相続人である人が亡くなった場合は代襲相続とはなりません。この場合についてはまた後で説明します。
恥ずかしながら、私は昨年行政書士試験の受験勉強をしていた時点ではこれについてあまりはっきりとは理解できていませんでした。
代襲相続のいろいろ
被相続人の子である相続人が亡くなっている場合
代襲相続で一番よくあるのがこのパターンだと思います。
上の図で、Dがすでに亡くなっていて、その後でAの相続が発生した場合です。
被相続人Aの子であるDに子(図のFとG、Aにとっての孫)がいるならば、その子が代襲相続人となります。Dに子がない場合は代襲相続は発生せず、相続人はBとEのみになります。
この場合の相続人は、配偶者B、子E、孫F、同Gになります。
被相続人の子である相続人、および相続人の子である代襲相続人が亡くなっている場合
被相続人Aにとって子Dがすでに亡くなっている場合にはその子であるGとHが代襲相続人になりますが、その代襲相続人が亡くなっている場合です。代襲相続人に子がある場合(図のIとJ、Aにとっての曾孫)は、代襲相続人の子が再代襲相続人となります。
この場合の相続人は、配偶者B、子E、孫H、曾孫I、同Jとなります。
被相続人の兄弟姉妹である相続人が亡くなっている場合
被相続人に第一順位である子がない場合、相続人は第二順位である直系尊属(親)になります。第二順位である相続人もすでに亡くなっている場合は、第三順位である兄弟姉妹(図のC)が相続人になります。
その兄弟姉妹が亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子(図のEとF、被相続人Aにとって甥姪)が代襲相続人になります。
この場合の相続人は、配偶者B、甥姪E、同Fとなります。
傍系血族の代襲相続は一代限り
相続人が兄弟姉妹である場合、代襲相続が発生するのは一代限りです。つまり、被相続人にとって甥姪がいるならば彼らが代襲相続人となりますが、その甥姪が亡くなっている場合はそれまでであり、たとえ甥姪に子がいたとしてもそれ以降は代襲相続は発生しません。これについても民法に規定されています。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
e-Gov 法令検索 民法
第八百八十九条
次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
上記2項にある887条2項の規定とは、被相続人の子が亡くなっている場合にその子が代襲相続人になるという話です。
887条3項では、代襲相続人が亡くなっている場合にその子がまた代襲相続人になるという話です。つまり、被相続人の子については無限に代襲相続が発生します(無限と言っても実際には限度がありますが)。
しかし889条ではこの887条3項の規定は準用されていません。つまり、兄弟姉妹の場合は代襲相続は一代限りで、それ以降の代襲相続は発生しないということになっています。
この図の場合、被相続人Aの兄弟姉妹Cがすでに亡くなっているので、その子(EとF、Aにとっての甥姪)が代襲相続人になります。しかし、その代襲相続人Fが亡くなっている場合に、その子であるHとIは相続人にはなりません。
このあたりの条文はなかなかに複雑なので、また改めて説明しようと思います。
数次相続について
代襲相続と似たようなもので(実際は別物ですが)、数次相続というのがあります。
これは単純に、被相続人が亡くなって相続手続きをしないままに相続人である子も亡くなってしまったときを考えます。この場合、まず本人である被相続人の相続手続きを行い、次いで本人の相続人であり被相続人である子の相続手続きを行うという、2回分の相続手続きを行うことになります。これが数次相続と言われます。
2人の被相続人について普通の相続手続きをそれぞれ順番に行うだけのことなので、民法でもこれについては特に規定されていません。
このように、代襲相続と数次相続は似て非なるものです。
遺産分割協議書の作成について
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、もし1人でも欠けた場合、その協議は無効となります。そのため、誰が相続人となるのかを確認する必要があります。場合によっては、これが非常に複雑になることもあります。
もしご自身で分からない場合は、専門家にご相談ください。
しかし行政書士は不動産登記に関する手続きはすることができないので、もしそれも含めて依頼したいのであれば行政書士ではなく司法書士にお願いすると費用を抑えられると思います。
相続財産の中に不動産が含まれる場合に、もし遺産分割協議書の作成だけお願いして不動産登記の手続きはご自身で行うという場合は全体の費用も抑えることができるので、その際にはぜひ行政書士にご依頼ください。
投稿者プロフィール
- 宇都宮市の行政書士
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